「もう黙ってはいられない!」
王宮に閉じ込められたプリンセス・ジャスミンが時代をこじ開けました。
ディズニー屈指の名作に、2019年、人種や性別を超えてあらゆる命が等しく美しいという大切なメッセージを加えて実写化された映画『アラジン』。
ウガンダ出身の母のもと煌びやかな褐色の肌を持って生まれた俳優、ナオミ・スコットが晴ればれと演じるジャスミンの美しさと力強さから目が離せません。
この記事には『アラジン』のネタバレを含みます!見ていない方はご注意ください!
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『アラジン』実写版の作品情報
公開日 | 2019/6/7(日本) |
---|---|
監督 | ガイ・リッチー |
原作 | 『アラジンと魔法のランプ』 |
脚本 | ジョン・オーガスト |
キャスト | ウィル・スミス ほか |
音楽 | アラン・メンケン |
上映時間 | 2時間8分 |
配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ |
『アラジン』実写版のあらすじ
貧しいアラジン(メナ・マスード)は、相棒の猿・アブーとともに、アグラバーの街でしがない盗人をして暮らしていました。
ある日、いつものように市場で盗めそうなものを物色していると、美しい女性ジャスミンと出会います。
ジャスミンの美しさに見惚れたアラジンは、気を引こうと画策しはじめました。
そんなアラジンの前で、ジャスミンがトラブルに巻き込まれて…。
『アラジン』キャスト・吹き替え一覧
役柄 | キャスト名 | 日本語版吹き替え声優 | 特徴 |
---|---|---|---|
アラジン | メナ・マスード | 中村倫也 | アグラバー王国の住人。貧乏で盗人をしているが、実は純粋な心の持ち主 |
ジャスミン | ナオミ・スコット | 木下晴香 | アグラバー王国のプリンセス。国王になる日を夢見ている |
ジーニー | ウィル・スミス | 山寺宏一 | ランプの魔人。魔法のランプをこすると現れる |
ジャファー | マーワン・ケンザリ | 北村一輝 | アグラバー王国の国務大臣。国王の座を狙っている。目的のためなら手段を選ばない |
サルタン | ナヴィド・ネガーバン | 菅生隆之 | アグラバー王国の国王。ジャスミンの父。時にジャファーが持つ魔法の杖で操られてしまう |
ダリア | ナシム・ペドラド | 沢城みゆき | ジャスミンに仕える侍女 |
アンダース王子 | ビリー・マグヌッセン | 平川大輔 | ジャスミンに求婚する他国の王子。マヌケ |
ハキーム | ヌーマン・アチャル | 宮内敦士 | アグラバー王国の近衛隊長。ジャファーとジャスミンの間で苦心する |
『アラジン』ジャスミン役|ナオミ・スコット
くっきりとした目鼻立ちの美人でありながら、目元に慈悲深さをたたえ、まさに“プリンセス”たる風格も併せ持ったナオミ・スコットはイギリスの俳優です。
1993年5月6日生まれで、2024年現在は30歳を目前にしています。
旧来のおとぎ話に登場するプリンセス像をアップデートする目的もあった今回の実写化において、ナオミの堂々たるキャラクターとジャスミン像が重なったのでしょう。
冒頭でも触れましたが、母方にウガンダ共和国の血筋を持ち、母親がインド系移民であることから、“ジャスミン的”な風貌にも恵まれました。
また実写版では、アニメ版とは異なり、ジャファーをジャスミン自身が倒して自国を統べる王になる、新しいストーリーが追加されています。
つまり、自身で未来を切り拓いていくような、たくましいジャスミン像をナオミは体現する必要がありました。
「ディズニーと、ガイ(・リッチー監督)、プロデューサーがこの役柄に求めるものが一致したということね」とナオミは説明する。「だから私もワクワクして、『この役をモノにしなくちゃ』という気持ちになったわけ」
ナオミ・スコット ──ハリウッドを魅了する次世代ヒロインの素顔。 | Vogue Japan
芯が強くあふれる魅力を持ち合わせるジャスミンと、ナオミの演技に対する才能はもちろん、人を惹きつけるカリスマ性が見事にマッチした瞬間です。
ジャスミンがアラブ系女優ではないと批判もあった?
たくましいジャスミン役にピッタリなナオミですが、それでも原作ファンの一部から「なぜアラブ系の俳優を起用しなかったのか」と批判が殺到しました。
歴史ある物語を再構築する度に一定数起こる批判ですが、私個人的には「血筋にかかわらず役を生きる」ということが俳優の職務だと思います。
何者でもないからこそ、何者にもなれるという“俳優論”をもとに考えれば、ジャスミン役は誰にもやる権利があります。
日本人でも、男性でも、なんなら犬や猿がやってもいいと考えます。(虎とのシーンがややこしいかもですが)
なんともナンセンスな批判だと思いますが、そんな偏見にも真っ向から立ち向かう、ナオミ・スコットの強いジャスミン像が本編の説得力を担保していました。
実写版ジャスミンはどんな人?5つのポイント
実写版ジャスミンは5つの特徴がありますので、詳しくご紹介します。
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アグラバー王国の美しい王女
ジャスミンは身体の中心に“愛の軸”をしっかりと持った勇気ある女性です。
しかし、アグラバー王国のプリンセスである彼女は、まさに籠の中の鳥のごとく城に軟禁されていました。
男性が国を総べることが当たり前とされ、女性はいい伴侶を見つけて家庭を守るのが任務とばかりに、ジェンダー丸出しの時代背景を背にし描かれる物語のなか、時代や環境に囚われず、いつか国王になることを夢見るたくましい女性です。
実写版ジャスミンの歌「スピーチレス(Speechless)」
ジャスミンといえば、プリンセスとしてはめずらしいパンツ姿が印象的です。
ジャスミンがかつてより担う、“悪い意味で使われがちな女性らしさ”からの脱却というテーマが、「スピーチレス」という楽曲にこめられていました。
ジャスミンが数多の困難や意地悪に囲まれ、女性蔑視の目にさらされながら歌い上げる姿に、心が震えます。
古い価値観に疑問すら持たない人々の顔をのぞきこむようにしながら朗々と歌い、身体中に力をこめてありったけの声を張り上げるジャスミンの姿そのものに、歌詞やメロディーを越えて、観る人の心に訴える力があるのです。
これまで、長い歴史のなかで声を奪われ泣き寝入りしてきた女性たちの強い想いを一手に引き受けて、ジャスミンが「叫べ!」と私たちを鼓舞してくれているようでした。
実写版ジャスミンの色鮮やかなドレス
『アラジン』を実写化するにあたり、ジャスミンの特徴のひとつでもある「へそ出しルック」が封印されました。
現代の規範のなかで、より幅広い世代に届けるため、という意図があるようですが、「ジャスミンといえばくびれたお腹が最高にセクシーなのに…」と思ってしまうのは筆者も同じです。
ところが!
キュートなへそ出しルックに代わり、ジャスミンを彩る色鮮やかなドレスの数々には目がくらみました。
健康的な胸元を際立たせる金縁の刺繍や、ゆるやかな腰のカーブを隠しきってしまわない、ジャスミン専用に仕立てられたキラキラのドレスたち、可愛かったです。
ダンスに飛行にと、活発なジャスミンにはやっぱり動きやすいパンツ姿がお似合い!
ふんわり光るヴェールが夜風にそよいで…あまりにロマンティックでとろけてしまいそう。
アラジンとの出会い、そして交流のきっかけとなるブレスレットも、金色とエメラルドグリーンで、ジャスミンの華奢な手首を守るようにフィットしていて素敵でした。
実写版のみに登場するダリアとの関係性
実写版『アラジン』で初めて登場したキャラクターにダリア(ナシム・ペドラド)という美女がいます。
プリンセスにお仕えする侍女でありながら、ジャスミンとの長い付き合いを感じさせる、打ち解けた会話にほっこりしました。
主従の関係でありながら、「すべてを貴方様に捧げます」のような旧来の従者然とはしていないダリアは、さながらジャスミンの親友といった様子です。
ジャスミンの悩みを共に抱えたりはしますが、幽閉されるプリンセスを必要以上に憐れんだりはしません。
ダリアも、あくまで自分の人生のみに責任を感じて、自分を喜ばせるために生きている当たり前の一個人として描かれます。
かつてより記号的に描かれてきた侍女に感じる抑圧などは一切ない、言い換えればファンタジーなキャラクターでもありますが、ダリアのはしゃぎっぷりは間違いなく実写版『アラジン』を面白くした一因でした。
『アラジン』ジャスミン役の日本人声優は木下春香さん
実写版『アラジン』は、ジーニー役をウィル・スミスが演じたりとキャストも話題になりましたが、日本語吹替を担当した各キャストも超豪華です。
アラジン役には俳優の中村倫也さん。
中村さんの低温ボイスと、茶目っ気あふれる芝居がアラジンにぴったり!
また、ジーニーと言えば、おなじみ声優界の宝・山寺宏一さん。
1992年のアニメーション映画から引き続き、笑顔の裏でひとり悲しむ奥深きジーニーを請け負っています。
そして、ジャスミンを演じたのは本作が吹替デビューとなる声優の木下春香さんです。
もともとディズニーも『アラジン』も大好きだったという木下は「この作品のオーディションがあると知ったときに、自分から受けたいと申し出たんです」と明かしつつ、役が決まったときは「涙を流して喜んだ」と振り返っていた。
『アラジン』吹き替えに抜てき!ジャスミン役の木下晴香って?|シネマトゥデイ
ミュージカルを主戦場とする木下さんの、あまりにのびやかな歌声は、ナオミのジャスミンとマッチして鳥肌ものの素晴らしさです。
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まとめ:『アラジン』実写版のジャスミン役ナオミ・スコットの美しさは格別
どんなに高貴な立場に居ても、時代や環境が古いままではふつうの女性となんら変わらない苦しみを味わい続けさせられるプリンセス。
アラジンとジーニーによるバディムービーの側面を持ちながら、やはり実写版『アラジン』の主人公はナオミ・スコット演じるジャスミンだったように感じます。
夢にあふれたプリンセス像を破壊した先には、ジャスミン国王が自らの手でつかみ取った自由がありました。
そして、実写版『アラジン』に映るジャスミンは、最高に夢と希望にあふれ、自由そのもののようでした。